- タイトル
『浦島太郎』
- カテゴリー
- エディトリアルデザイン,
書体デザイン
- 作品形態
- 和本(A4横), 巻物
- 制作ツール
- 毛筆, 鉛筆, Illustrator, Indesign,
Photoshop, Fontographer
物語を再構成するという授業で私は浦島太郎を選びました。
浦島太郎の物語は歴史が非常に古く、日本書紀に初めて登場します。そこから少しずつ形を変え、現在知られている内容になりました。
この物語が収録された代表的な作品は万葉集と、江戸時代に作られたお伽草子という絵入り物語です。その二つの浦島太郎を再構成し、現代でも読めるようにしました。当時の読者に近い気持ちで読んでもらえるようにオリジナルの雰囲気を守りつつアレンジし、専用に制作した平仮名フォントを使っているのが大きな特徴です。
お伽草子版 浦島太郎
見本となるお伽草子は渋川版お伽草子と呼ばれ、18世紀頃に作られました。大学の図書館と国立国会図書館に実物があったため、それらを参考に再構成をしました。絵の部分は国会図書館のウェブサイトにある原書の画像を筆でトレースし、必要に応じて描き加えています。
再構成↑
原書→
絵と文章の融合
原書では絵と文章が完全に分けられていますが、再構成する際には物語の世界に入り込みやすいように絵の中に文章を溶け込ませました。
専用フォントの制作
この作品で最も力を入れたのが平仮名の書体です。オリジナルの雰囲気に近い書体が制作当時には無かったため、原書の画像を元に筆の流れを意識しつつ現代でも読みやすい仮名フォントを制作しました。漢字部分は既存のフォントを使用していますが日本語は平仮名の割合が大きいため、平仮名の書体で印象がガラリと変化します。専用のフォントを使用することによってオリジナルの持つ魅力を味わうことができるようになっています。
Point
一つの文字をそのままトレースするのではなく、すべての文章の中から形の良い文字をいくつか選びたして平均化したものを参考にデザインしています。
同じ文字でもいくつかのバリエーションを取り入れることで表現の幅を広げました。
筆の流れを自然にするために合字を作りました。アウトライン化する際にはアンカーポイントを最小限にし、データ量を抑えています。
再構成 上段:玉手箱を開ける場面
下段:最後の場面で鶴となる浦島
万葉集版 浦島太郎
万葉集最古の写本の中で、浦島太郎が載っているものには万葉仮名が使われています。そのままでは読むことができないため、お伽草子と同じ行書体で再構成しました。また、万葉集は巻物であったと推定されているため巻物で再現し、外観は当時の貴族社会の華やかさを意識して作りました。この頃の浦島太郎は「水江の浦嶋の子」という名前で呼ばれているのが特徴です。
萬葉集巻第九残巻(藍紙本) e国宝
下段 現代語訳